2018年1月26日金曜日

謎の天才画家ヒエロニムス・ボス


ボスの代表作『快楽の園』をあらゆる角度から徹底検証する、 90分のドキュメンタリー

2016年/スペイン、フランス



監督:ホセ・ルイス・ロペス=リナレス
出演:ラインダー・ファルケンブルグ、オルハン・バムク、サルマン・ラシュディ、ルドヴィコ・エイナウディ
配給:アルバトロス・フィルム
公開:12月よりシアターイメージフォーラムほかにて公開中


12月16日より公開中『謎の天才画家ヒエロニムス・ボス』。
ちょっと時間が経ってしまったが、まだまだ上映中なので。

不思議な絵を描くボスは、昔から気になっていた。
小学生ぐらいの時からマグリットやダリが好きだった僕だが、
ボスのことを知ったのはもっと後。
海外に行くようになってからだと思う。
最初はシュールレアリズムの画家と思ったが、
時代はもっと古いルネサンス期で、生年、没年とも、
レオナルド・ダ・ビンチとほぼ同じくらい(1450頃-1516)。
その時代の中の誰とも違う個性を発揮していたことがわかる。

彼が描く絵は、日本の「百鬼夜行」のようだ。
空想上の生き物だけでなく、人と動物の合体、
生物と無生物の合体、巨大化した生き物が描きこまれて、
細部までじっくりと見たくなる。
本作は彼の代表作で、スペインのプラド美術館にある
「快楽の園」の謎に迫るドキュメンタリーだ。
ボスという人物を探る面もあるが、どちらかといえばこの絵画のテーマや、製作の過程の秘密や歴史を探る作品だ。

彼が生きた時代は、レコンキスタが終わり、
スペインが新大陸を発見。
ヨーロッパの覇者になった頃。
ボスが暮らしていたフランドル地方は商業が発展し、
裕福な商人や王侯貴族が生まれていた。
そんな中でボスは人気の画家で、
彼の作品を王侯が競ってコレクションしていたという。
中でもスペインのフェリペ2世は彼の作品を集めていたので(ボスの死後だが)、この「愉楽の園」がプラド美術館にある。

映画では、エックス線を使ったりして下絵を探ったり、
絵に描かれている楽譜を演奏したりする。
そして聖書の逸話と絵の関係性などが
様々なジャンルの人たちによって語られる。
それはそれで面白いが、それでも
なぜ彼はこんな絵を描いたかの動機や発想はわからない。
だから、魅力的なのだろう。
この「愉楽の園」をプラド美術館で見た
ダリやミロ(共にスペイン出身)に影響を及ぼしたと思うと、
ボスはやはりシュールレアリズムの元祖かもしれない。

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